〇南相馬の街では,マスクをしている人をほとんど見かけなかった。内部被曝を少しでも防ぐ意味ではマスクをすべきと思うが,いない。聞くと,「マスクなんかしてもしょーがねーんだよ」と。これを愚かと言うのは簡単である。私には,この街で生きていく意志の表れに見えました。南相馬で生活する人にマスク使用を期待するならば,ここ以外の地域,例えば東京などでもマスクをすべきである。勿論瓦礫撤去や流出物洗浄の現場では皆マスクをします。
〇今まだ国の方では検討段階のようだが,瓦礫を撤去しても持っていくところが無い。放射能汚染された瓦礫ということですわね。地元の方が笑いながら,「あの瓦礫,スペースシャトルで宇宙に持って行ってくれないかな」と。冗談ではあるが,切実な思いでもあるだろう。国有地に仮置きするしかないだろうと思うが。
〇南相馬には福島県庁の出張所のような庁舎があり,災害派遣等従事車両証明書を貰う時はそこに申請する。この庁舎の駐車場の一角には,例の白い服を着た自衛隊の除染部隊が常駐していた。脱衣してシャワー浴をするテントもある。全身を計測して黒の場合,あそこで除染するのでしょうね。
〇ウチから南相馬に行こうと思ったら,常磐道を北上していくのが一番早い。途中に福島第一原発がありますので,通行止になっているのは申し上げるまでもない。止まっているのは道路だけでなく,鉄道も同様だ。あの一画だけ通れない。常磐線原ノ町駅付近の踏み切りを通ったが,線路は真っ赤に錆び,草ぼうぼうであった。
〇原ノ町駅の近くの居酒屋に入り,吉田類気分を満喫した。震災の影響でメニューは少なめということであった。モツ煮込みを頼んだら,なんとモヤシが入っていた。モヤシはあの辺の名産らしい。ニンニクが効いた煮込みとシャキシャキのモヤシの相性は悪くなかった。
〇原発近くの住民の中には,「東電は悪くない。悪いのは津波」という人がいるそうだ。「安全」と言っていたものがこんなことになっているのだから責任は免れないし,事故後も情報隠蔽したりで完全にアウトであるが,そう言う人を私は批判したり冷遇したりする気持ちになれない。原発建設に際して,そう多くもない人口の村や町で,国,東電,県,地元の有力者,それまで反対していたのに転んだ人,などなどに追い込まれたら堪らない。そこに住み続けようと思うなら,嫌でも飲まずにいられないところもあったろうと思う。その後ばらまかれた金で,家を建て替えたり,子供を学校にやったりしていたら,この現状を前にどう考えたらいいかわからなくなってくるだろう。東電擁護的な発言をする原発周辺住民が実際にいるとすれば,その人たちはまた一つ,残酷なまでの被害者と言えるかもしれない。
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