ぼやっとなんとなく人物が確認できるようなものでも,水に入れると全てが溶けて消えてしまう。
一番丁寧なやり方は,泥だけなんとか払って,画像をスキャンしてデータ化する。
しかしそんな機材は無く,仮に揃えたとしてもキリが無い。写真は日々浸食されダメになっていきます。
なるべく多くの写真を救おうと思ったら,スピードも重要になります。
そういう写真を被災地から東京に送って,休日などにボランティアを募って洗うというプロジェクトもありましたが,なにしろ個人の生活に踏み込むところもあり,地元からあまり出したくないということもあるだろう。
またこれは私が入った現場でもあったことだが,地元の人も当然ボランティアに入っており,写真を見て「あ,〇〇さんだ!」ということもある。
直接電話をして,引き取ってもらったケースが実際ありました。
そういう意味でも,地元の人が作業に加わった方が返却効率がいい場合もあります。
ネガは結構丈夫で,キズはついているとしても,ネガの体裁を保っているものが多かった。
ネガは私が入った現場から,再度きれいにする現場に持ち込まれるのですが,そこでフィルムスキャナーを使ってデータ化していたようです。
その作業をしていた人と宿泊所で一緒になったのですが,これもまたキツいらしい。
ネガではなんだかわからないものが,スキャナーで読み込むと,そこにありありと生活が浮かび上がってくる訳です。
厳しいと言ってましたね。
流出物は勿論写真だけではない。
位牌,手紙,卒業証書,株券,預金通帳,ゲームソフト,まあいろいろある。
紙ものは困るんですよねえ。
子供の絵なんてのも困る。
名前が記入されていることが多いので,持ち主に戻りやすいとは思うのですが,写真のようにじゃぶじゃぶ洗う訳にはいかない。
あれも消しゴムの滓などを使うときれいになると思うのですが,当然現場に大量の消しゴムがありもせず,そこまで丁寧なことはやっていられない部分もあるでしょう。
またそういう「どうやるか」「どこまでやるか」というところは,その日のリーダーの指示に沿って決まる訳ですが,人によって微妙に感覚が違う。
それは当然のことで,勿論ある程度のマニュアル的なものがあって,その通りにやるのがいいとは思いますが,全く同じ指示にはならない。
これはしょうがないと思います。また,「こうするのが100%正しい」ということは無いようにも思います。
とにかく時間がかかり,なかなか未洗浄の流出物が減ってこない。
地道に続けていく他ない。
ここからは私が見たこと,聞いたこと,感じたことなどを箇条書きにしていきたいと思います。
〇南相馬は飲食店の絶対数が少ないようだ。開いているお店は大繁盛。東京にあるような奇をてらった店でなく,普通の食堂,ラーメン屋,蕎麦屋なんかをやったら商売になるに違いない。
〇一泊目は安いホテルがあったのでそこを利用した。二泊目も使おうと思ったら満室でダメ。朝,食堂に行ったら作業服のオヤジばっかり。どうやら原発関連の作業員らしい。原発の近くでは寝られないので,南相馬まで来ていたのですね。
〇南相馬市は独自に放射線量の計測を連日各地で細かく実施している。夏になると雑草が一気に伸びます。それを草刈り機で掃い始めたら,近くで線量を計っていた計測器の数値が一気に跳ね上がり,草刈りを中止してもらったそうです。
〇南相馬市街の空間線量はそう大したものでもないのだが,そういうことで,ピンポイントで異常に高いところがある。水溜り,側溝,苔,草むらなど,近づくと桁が二つぐらい違うところがあるようだ。ほんの数メートルで全然違う。
〇山の方は特に線量が高いらしい。ふわっと気流が上昇して,雨,雪になって落ちたのだろうか。
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